基礎ER図

ER 図の記法比較 (IE / IDEF1X / Chen)

定義

ER 図の記法とは、エンティティ・関連・カーディナリティ・参加制約などの ER モデル構成要素を図式化する視覚言語であり、IE 記法 (crow's foot)、IDEF1X、Chen 記法などが実務・学術の場面ごとに使われる。

まず身近な例で: 同じ内容を 3 つの言語で書き分けるようなもの

ER 図の記法は 3 種類 (IE / IDEF1X / Chen) が代表的で、「同じ ER モデルを違う視覚言語で書き分ける」 と考えるのが分かりやすい。 内容 (エンティティ / 関連 / カーディナリティ / 参加制約) は共通で、記号が違うだけ。

3 記法で同じ ER 図を描き分ける

同じ「顧客 / 注文 / 注文明細」の ER モデルを、3 記法でそれぞれ描いてみる。 並べて見比べることで、記号の対応が視覚的に理解できる。

同じ ER 図を IE (crow's foot) 記法で描くと
顧客顧客ID (PK)名前注文注文ID (PK)顧客ID注文日注文明細注文ID (PK)明細番号 (PK)商品名数量

現代の作図ツール (dbdiagram / DrawSQL / Draw.io / Miro / Lucidchart) の既定記法。実務でもっとも見る

同じ ER 図を IDEF1X 記法で描くと
PP顧客顧客ID (PK)名前注文注文ID (PK)顧客ID注文日注文明細注文ID (PK)明細番号 (PK)商品名数量

米国連邦標準の記法。防衛・官公庁系や大規模基幹系の設計書で残存。実線=識別関係、破線=非識別関係

同じ ER 図を Chen 記法で描くと
11,N11,N顧客顧客ID (PK)名前注文注文ID (PK)顧客ID注文日注文明細注文ID (PK)明細番号 (PK)商品名数量

Peter Chen 提唱の原初的記法。関連を菱形、属性を楕円で描き分ける。学術文献で頻出、実務はほぼ絶滅

記号の対応表

エンティティ
IE
四角
IDEF1X
角丸四角
Chen
四角
弱エンティティ
IE
二重四角
IDEF1X
実線識別関係で判別
Chen
二重四角
関連
IE
IDEF1X
Chen
菱形
1 (必須、max=min=1)
IE
縦棒 |
IDEF1X
親端: 無印 (default)
Chen
1
0..1 (任意、max=1, min=0)
IE
| ○
IDEF1X
子端: ● + Z
Chen
0,1
0..N (任意 + 多、min=0)
IE
○ 鳥足
IDEF1X
子端: ● 単独 (子端の default)
Chen
0,N
1..N (必須 + 多、min=1)
IE
| 鳥足
IDEF1X
子端: ● + P
Chen
1,N
識別関係
IE
主キー継承で判別
IDEF1X
実線
Chen
二重線
非識別関係
IE
主キー独立で判別
IDEF1X
破線
Chen
単線
属性
IE
エンティティ内に列挙
IDEF1X
エンティティ内に列挙
Chen
楕円で外に描く

IDEF1X の記号は親端と子端で非対称。子端 (many 側) には ● (solid dot) が常に置かれ、必要に応じて P (1..N) / Z (0..1) / 数字 (exactly N) の文字を付記する (原典: FIPS PUB 184)。親端は既定で「必ず 1」を意味するため通常は無印。 本サイト内の変なER図の #6 対比図では、視覚差を強調する目的で ● / ○ / P / M を 混在させた簡易表現を採用しており、厳密な IDEF1X ではない (ツール Erwin / ER/Studio 等では 本節の表の記号が標準)。

変なER図 との対応: 違和感 #6 記法混在

架空 EC サイト運営システム ER 図
発注確定購入階層所属明細P対象6配送先配送先ID (PK)郵便番号住所カテゴリカテゴリID (PK)名称サブカテゴリID商品商品ID (PK)商品名価格カテゴリID顧客顧客ID (PK)氏名注文履歴JSONカート内商品ID配列レビュー全て血液型注文注文ID (PK)注文日顧客IDレビューレビューID (PK)評価本文サブカテゴリサブカテゴリID (PK)名称親カテゴリID注文明細明細ID (PK)商品名数量

変なER図 では、 ほとんどの関連が IE 記法 (鳥足と縦棒) で描かれているのに、「レビュー —対象— 商品」の関連だけ IDEF1X 記法 (● / P) で描かれている。

図の中で記法を混在させると、読み手は同じ記号を違う意味で誤読する。 1 枚の ER 図に登場する記法は 1 種類に統一するのが基本ルール。 違う記法で書かれたドキュメントを比較したい場合は、注釈で「この図は IDEF1X 記法」と明示するのが望ましい。

よくある疑問

Q.3 記法を混ぜて使ってもよいですか?
A.同じ図の中では混ぜない。読者が同じ記号を違う意味で誤読する原因になる。プロジェクトごとに 1 記法を選び、そのプロジェクトの ER 図はすべて統一する。プロジェクトを横断するときは記法を明示するのが望ましい。
Q.Chen 記法は今も使われますか?
A.実務ではほぼ絶滅、学術文献では現役。データベース理論の教科書や論文で「関連は菱形、属性は楕円」の図を見たら Chen 記法を思い出すために本ページを参照するのがよい。

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